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空間デザイナー 坂巻陽平氏に聞く ー逆説的思考から生まれた青山の新ランドマーク

2019.12.26

空間デザイナー 坂巻陽平氏に聞く ー逆説的思考から生まれた青山の新ランドマーク

世界を舞台に、話題の商業空間やランドマークを次々と手掛けてきた坂巻氏。移転・リニューアルした「LOVELESS青山」の空間デザインを担当した同氏に、その経緯やコンセプトを伺った。新しく生まれ変わるために必要なアイデアとは何だったのだろう?

みんなでプロジェクトを作り上げていく感覚

――現在は「Wonderwall」のデザインディレクターとしても活躍していらっしゃいますが、今年になってご自身の会社を設立されたのですね。
2018年にチーフデザイナーからディレクターになり、主に海外の物件を手掛けていました。そうした中で、時代が変わってきたことを感じていたのです。自分と同世代の発注者が増えてきて、単純に発注者と受注者という関係性よりも、フォトグラファー、グラフィックデザイナー、ファッションデザイナーなど、異なる分野の個性的な人間が集まって、ひとつのプロジェクトを進めていくやり方が求められているのではないかと。やはり、「Wonderwall」は背負ってきたものが大きなブランドですし、発注者からすれば敷居が高いということがありました。ですから、もっとフレキシブルに対応できる会社を立ち上げ、「Wonderwall」の業務と並行しながら、自分の案件も進められる環境を整備していきました


――「LOVELESS青山」を手がけることになった経緯についてお話しいただけますか。
今回のリブランディングにおけるディレクターである、佐々木(拓真)さんに誘われて、このプロジェクトに参加しました。もともと彼のブランド「NOMA t.d.」のファンで、好きな画家が共通していたこともあり、感覚が近いのかなぁと。予想通り、こちらの提案にシンプルに返してくれるし、あちらからもアイデアを出してもらい、話がスムーズに進みました。


――同世代で感覚が共有しやすいことが、今回のリブランディングにも影響したのですね。
そうですね。構造建築についても自分のアイデアを入れたかったので、「NEY + PARTNERS JAPAN(ネイ アンド パートーナーズ ジャパン)」の代表である渡邉(竜一)さんをお招きして、「LOVELESS」の象徴となる、“普通では考えられない階段”を作り上げることができました。また、発注者も同世代で感覚が近く、大胆な変化を快諾していただいたことがこのプロジェクトの後押しにもなりました。


――今回のリブランディングに欠かせないメンバーが揃っていたということですね。それでは、内装デザインを担当するにあたり、坂巻さんが最初に意識したこととは?
リブランディングによって、今の感覚にフィットさせることが大きな目的でした。ですから、ショップの概念から変える必要性を感じていました。そこで、エクスクルーシブ(閉鎖的)な手法ではなく、インクルーシブ(包括的)な手法を取りました。簡単に言えば、世界観を打ち出してお客さんを圧倒させる手法ではなく、お客さんや商品、イベントが店に入ることで世界観が完成する手法ですね。

街としてのシナジーが生まれるエクステリア

――「LOVELESS青山」の新店舗は、目の前に「H BEAUTY & YOUTH」、通りを隔てて「SUPER A MARKET」や「L’ECHOPPE」など、セレクトショップの中でも特に感度の高いコンセプチュアルなショップに囲まれています。こうした立地や環境についてはどう捉えたのでしょうか?
旧店舗と新店舗では、地下から地上へ変わったことも大きな変化ですね。新築物件だったということもあったので、建築家さんと設計の段階から相談させていただき、外構部のデザインにもこちらのアイデアを取り入れてもらいました。というのも、「LOVELESS」の位置するT字路は、狭い道路なのに頻繁にクルマが往来するのです。ショッピングする人が、クルマを避けるように早足で移動しなければならない感じでした。そこで、外構部にベンチとグリーンを配置して、くつろいでショッピングできるシーンを思い描きました。こうしたシーンを生み出すことで地域に貢献しつつ、結果的に「LOVELESS」にも還元されていくことが理想です。店内の“カフェ&ブックス”コーナーが、この界隈でゆったり過ごせるスペースとして、今後より機能していくと期待しています。周囲と共存しながら、街としてのシナジーを発揮する方が魅力的ですから。

――設計にあたっての障壁や制約、構造上の問題など苦労した点とは?
ガラス張りで中がよく見える、まさにシンプル・イズ・ベストな構造だったので、理想的な新築ビルでした。装飾的な要素を排した、白い外壁のシンプルな空間だったこともあり、立地も含めて最高の条件でした。佐々木さんがディレクションしたMD(商品構成)を見ても、これまでとは全く違う印象を受けましたし、これで本当のリブランディングができると確信しました。あくまで商品が中心にあって、ショップは変わり続けけられるプラットフォーム。いわば、ポップアップショップが連なっていくイメージですね。内装はそのための舞台であり、シンプルに徹するべきだと。

ヴァーチャルを現実に戻すという逆説的手法

――今回の内装デザインについて、“TRADING MEDIA”というコンセプトを掲げていますが、具体的にどのようなことなのでしょう?
今やリテール(小売り)の主戦場となっているECでは、スマホやPC画面に多数のウィンドウを立ち上げながら、スワイプやクリックをして商品を探しますよね。実店舗の存在意義が改めて問われる現在、ひとつの答えとして自分が考えたのが、ヴァーチャルを現実に戻すということでした。ひとつの空間がひとつのウィンドウとなり、実空間をスワイプしていくような感覚で、お客さんが新しい商品に出会うことができる。ショップ全体がひとつのメディアとして機能し、結果的にブランドになればいいなと。ブランディングからブレイクダウンして、MDしていく手法の真逆を取ったのです。

  • ――そういったコンセプトから、半透明のファブリックで仕切られた小部屋という構造が生まれたのですね。
    PC画面上のウィンドウのように、ファブリックを通してその奥が見えるのです。手前の商品は100%の彩度で見え、その奥にある商品は50%の彩度になって、その存在を意識させます。さらにその奥は25%の彩度になるレイヤー構造ですね。画面を次から次へとスワイプしていくような感覚で、お客さんにファブリックで仕切られた空間を旅してもらう。基本的には白い空間なのですが、ブルー、グリーン、ピンクといった色を使った空間をいくつか設けています。半透明のファブリックと白い壁が色を吸い上げる効果があるので、光の入り方でその周囲にも色があるかのように見えるという副次的な効果もあります。マテリアルではなくエフェクトで表現することできました。

「LOVELESS青山」のシンボルとなった階段

――空間の中で、最も目を引くのが黄色い階段ですが、これはよく見ると宙吊りになっていますよね。
縦のつながりを作る階段は、建築における大きな見せ場でもあります。そこで考えついたのが、階段を“吊る”ことでした。そうして、デコラティブな要素を全て排除して残った、100%ピュアな構造を表現したのです。重力に則って地面の上に何かを置くことは誰でも思いつくことですが、階段としての機能と十分な対荷重を満たしながら“吊る”ということは、非常に難易度の高い作業でもありました。そうして導かれた形状が、結果として非常にセクシーかつエモーショナルに感じられたのです。

――そうですね。側面の形状が先細りになっていて、なぜか不思議な魅力を感じます。
階段そのものは2.5tもの重量があるのですが、浮いているので軽く感じられる。こうした逆説的なアイデアも、愛想がないようで愛がある、「LOVELESS」っぽさとも共通するのかなと。また、軽く見えてキャッチーな色ということを意識して、試行錯誤した上で黄色を選びました。結果的に稲妻のようにも見え、たくさんのショップが密集するこの地域において、「LOVELESS」らしいシンボルを生み出すことができました。

  • ――坂巻さんご自身の好きなブランドや、注目しているデザイナーを教えてください。
    先ほどお話しした、「NOMA t.d.」もそうですが、「Needles」や「doublet」などインディペンデントな姿勢のエッジーかつカジュアルなブランドが好きですね。メジャーとマイナーの間にいて、自分たちの意思を曲げずにその位置に立っている。ファッションである以上、移り変わるものだし、消費されていくものですよね。でも、アートとコマーシャルの境界線にいて、いつも面白いものを作っているブランドです。服を見ているだけで単純に楽しいし、リスペクトしています。


    ――坂巻さんが建築的な面も含めて、面白いと思う海外のショップやブティックを教えてください。
    最近では、NYの「TOTOKAELO(トトカエロ)」や「KITH(キス)」が面白かったです。でも、改めて考えてみると、やっぱりパリの「コレット」(2018年に閉店)は最高のショップだったなぁと。僕の師匠である片山が2008年に内装を手掛けたのですが、そこで聞いたのは毎晩商品を転換していたのですね。常に驚きのある商品構成とそれをサポートする内装デザインで、世界中からのお客さんをもてなす。今でもセレクトショップの理想ですね。

常にフレッシュに見えて変わり続けること

――新しく生まれ変わった「LOVELESS青山」を、カスタマーのひとりとしての目線で見て感じることは?
レセプションのときは春夏の商品をセッティングしていたのですが、その翌日には冬物に切り替わっていました。店員さんの接客がとても気持ち良く、いろいろと買い物しました。その1週間後に視察したとき、商品の配置がガラリと変わっていて驚きました。そこで、前回は気付かなかった物がいくつもあったし、また買い物をしたくなりました。商材はほとんど変わっていないのに、新鮮に見えたからです。やっぱり、今の時代は伝え方が5割、どう見せるかということが大切なんですね。1週間という短期間で、こちらが意図したデザインが機能していたのです。商品の配置を変えることは店員さんにとっては負担でしょうが、そこを理解していただけたことも嬉しかったですね。


――それでは最後に、坂巻さんからのメッセージをお願いします。
表参道の一等地ということもあり、インバウンドも積極的に取り込みたいですね。自分の中の裏テーマとして考えていたのが、外国人客に日本らしさを感じてもらえる空間でした。半透明のファブリックは“障子”、仕切られた空間は“数寄屋造り”に似た構造になっていることを感じていただければ嬉しいですね。西洋建築の特徴は、用途がはっきりとした部屋を並列に配置して廊下でつなぐという手法です。それに対して日本建築の特徴は境界が曖昧なことです。特に数寄屋造りは、用途のはっきりしない部屋が連なっていて、襖を開ければ大きなスペースにもなり、そこで飲食してもいいし寝泊りしてもいい。こうした日本建築の特徴をデフォルメしたのが、「LOVELESS青山」の内装でもあるのです。

坂巻陽平 / YOHEI SAKAMAKI

1978年生まれ、愛知県出身。千葉大学卒業後、いくつかのデザイン事務所を経て、2008年に「Wonderwall」に参加。2018年に同社のデザインディレクターに就任。「ザ・リッツ・カールトン香港」のラウンジバー、東京・青山の「INTERSECT BY LEXUS-TOKYO」などを手がける。2019年、自身の会社「cinema inc.」を立ち上げ、「LOVELESS青山」の空間デザインを手掛けた。

  • LOVELESS青山

    住所:東京都港区南青山3-16-1
    電話:03-3401-2301
    営業時間:11:00~20:00(不定休)

Photo: Fumihito Ishii Text: Takuro Kawase Direction: Pomalo inc.

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